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マルオカブトガニ (Mangrove Horseshoe Crab)

Carcinoscorpius rotundicauda

マルオカブトガニ (Mangrove Horseshoe Crab)

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾

分布:インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、香港

カブトガニの仲間は今から4億5000万年前の太古には地球上に存在していた。そして現存しているのはカブトガニ、マルオカブトガニ、ミナミカブトガニ、アメリカカブトガニの4種のみ。その中で最も小さいのがマルオカブトガニだ。
和名のマルオというのは丸い尾という意味。本種の尾(尾剣)の断面は丸い形をしており、見分ける際には尾剣を触って確かめるといい。他の3種の尾剣の断面は三角形になっている。
本種を含む4種のカブトガニ科の血液は実は医療にはなくてはならない貴重な資源。この血液は細菌による毒素に非常に敏感に反応し、瞬時に凝固するという特性を持っている。その正確さと反応のスピードは現在の地球にあるあらゆる物質よりも優れているため、医療機器やワクチンに汚染がないかのテストに利用されている。アメリカ合衆国東岸にはアメリカカブトガニが生息しているが、毎年25万匹ものアメリカカブトガニが捕獲され、生きたまま血液を抜き取られており、我々人類の医療を影で支えているのだ。ちなみにカブトガニ科の血液は我々の赤い血を違い、青い色をしている。これは酸素運搬に鉄を使っているのか銅を使っているのかの違いだ。
初めて香港の干潟へ行ったときのこと。
案内してくれた香港城市大学のビリーさんにマルオカブトガニを見てみたいと伝えたところ、元朗区の下白泥という場所に連れていってくれた。
カブトガニの幼生はよくみられるものの、なかなかマルオカブトガニの姿はない。「いたいた!」と、ビリーさんがみせてくれたのは5.7cmのマルオカブトガニの幼生だった。
マルオカブトガニの幼生は見慣れてない自分にとってはほとんどカブトガニの幼生と同じだ。両種の違いは尾剣の長さ、尾剣の断面。マルオカブトガニは尾剣が長く、断面は丸い。
香港ではマルオカブトガニとカブトガニの2種が生息していて、同じ海岸で同時に2種の幼生を観察することもできる。
しかし両種は住み分けがあり、カブトガニはより砂底で海に近い場所を好み、マルオカブトガニはより泥底でマングローブ林を流れる小川など、塩分の低い場所でみられることが多い。
英名の Mangrove Horseshoe Crab(マングローブカブトガニ)はその生息場所をよく表していると思う。
東南アジアでは本種が食用にされることもあるようだが、一方で毒を持っているという報告もある。

マルオカブトガニの腹面

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニの腹面

マルオカブトガニの腹面。
10本の歩脚を持ち、そのうち8脚はハサミ状となっている。
最後の2脚は特殊な形をしていて、底質が泥のような沈み込む場所でも歩くことができる。

体勢をもとに戻そうとするマルオカブトガニ

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■体勢をもとに戻そうとするマルオカブトガニ

腹面を撮影するためにひっくり返すと、尾剣を使ってもとに戻そうとする。
尾剣は武器というよりもこういった使い方が主となっていると思われる。

マルオカブトガニの尾剣

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニの尾剣

マルオカブトガニの尾剣。
写真では分かりづらいが、断面は丸い形をしている。

マルオカブトガニの側眼

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニの側眼

マルオカブトガニの側眼。
眼は複眼といって、たくさんの眼が集合したもの。

マルオカブトガニの正中眼

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニの正中眼

マルオカブトガニの正中眼。
小さな眼が2つ確認できる。これは複眼である側眼とは違い単眼。

マルオカブトガニの口

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニの口

マルオカブトガニの口。
マルオカブトガニの口は歩脚の根元についている。脚を動かしながら口へ餌を運んでいく。

マルオカブトガニの歩脚

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニの歩脚

マルオカブトガニの歩脚。
先端がハサミ状になっている。

マルオカブトガニ後体部の棘

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニ後体部の縁棘

マルオカブトガニ後体部の縁棘。
6対の棘があるが、この個体の右側の縁棘はいびつな並び方になっており、典型的な例ではないので注意。

マルオカブトガニ

<甲幅6.8cm> 手づかみ 2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニ

若いマルオカブトガニ。
どこかのタイミングで怪我をしたのか、尾剣が折れ曲がっている。

マルオカブトガニ

<全長5.7cm 甲幅2.8cm・幼生> 2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■マルオカブトガニの幼生

生まれて初めてみたマルオカブトガニの幼生。
初めてみたときの印象は、「カブトガニの幼生と見分けがつかない」だった。
香港では2種ともみつかる可能性があるので、実際に捕まえてじっくり観察しないと、はっきりとした同定はできない。


マルオカブトガニの幼生

<全長5.7cm 甲幅2.8cm・幼生> 手づかみ 2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■マルオカブトガニの幼生

マルオカブトガニの幼生。
カブトガニの幼生と良く似ているが、尾剣と呼ばれる尾が長いこと、断面が丸くなっていることから区別することができる。

マルオカブトガニ幼生の防御姿勢

<全長5.7cm 甲幅2.8cm・幼生> 手づかみ 2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■マルオカブトガニ幼生の防御姿勢

マルオカブトガニの腹面を撮影しようとひっくり返してみた。すかさず体をくの字に曲げ、防御姿勢をとる。カブトガニの幼生も同じ行動をとる。

餌をとるマルオカブトガニの幼生

2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■餌をとるマルオカブトガニ

マルオカブトガニは底質から有機物を濾しとって食べている。
ブルドーザーのように砂泥を押し分けながら前へ進んでいく。
慣れるまでマルオカブトガニをみつけるのは非常に難しいが、慣れるとこの跡をたどることでみつけることができる。

餌をとるマルオカブトガニの幼生

2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■餌をとるマルオカブトガニ

マルオカブトガニは底質から有機物を濾しとって食べている。
ブルドーザーのように砂泥を押し分けながら前へ進んでいく。
慣れるまでマルオカブトガニをみつけるのは非常に難しいが、慣れるとこの跡をたどることでみつけることができる。

砂に潜るマルオカブトガニ

2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■砂に潜るマルオカブトガニ

撮影のために一時的に捕まえたマルオカブトガニをもとの場所へ置いてみた。

砂に潜るマルオカブトガニ

2016.9.12. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■砂に潜るマルオカブトガニ

マルオカブトガニは砂の中に潜るのが非常に上手い。
砂の上に置くとじわじわと身体が砂の中へ沈んでいった。

餌をとるマルオカブトガニの幼生

<幼生> 2016.8.21. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■餌をとるマルオカブトガニの幼生

幼生は砂泥底をブルドーザーのように進みながら餌を食べるので、甲の上に泥を被っている事が多い。
これがカモフラージュとなってみつけるのに苦労する。

マルオカブトガニの幼生

<幼生> 2016.8.21. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニの幼生

上の写真の個体から砂泥を取り除いた状態。

マルオカブトガニの幼生

<全長5.7cm 甲幅2.8cm・幼生> 2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■マルオカブトガニの幼生

マルオカブトガニの幼生を手のひらに乗せてみた。
小さくてとてもかわいい。
こうやってみると尾剣の長さがよく分かる。

マルオカブトガニの側眼

<全長5.7cm 甲幅2.8cm・幼生> 2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■マルオカブトガニの側眼

マルオカブトガニの側眼。
つぶらな瞳だが、力強い眼をしている。

正面からみたマルオカブトガニの幼生

<全長5.7cm 甲幅2.8cm・幼生> 2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■正面からみたマルオカブトガニの幼生

正面からみたマルオカブトガニの幼生。

マルオカブトガニが生息する環境

2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■マルオカブトガニが生息する環境

マルオカブトガニが生息する環境。英名のMangrove Horseshoe Crab(マングローブのカブトガニ)が示すとおりマングローブ林でみられた。

マルオカブトガニが生息する環境

2016.6.25. 香港/元朗区/下白泥 

■マルオカブトガニが生息する環境

この干潟は泥質で歩くのにとても苦労した。
香港ではマルオカブトガニはカブトガニに比べより泥質のところにいるという。

マルオカブトガニが生息するマングローブ林

2016.8.21. 香港/新界/大嶼島/東涌/東涌湾 

■マルオカブトガニが生息するマングローブ林

マルオカブトガニが生息している香港の東涌湾にあるマングローブ林。
この小川の中で餌をとるマルオカブトガニをみつけた。この小川は塩分が低く、海水の半分以下。
カブトガニの幼生はこれよりも海岸近くでみられたため、マルオカブトガニの幼生の方がより薄い塩分に適応しているだろうと想像される。


写真提供

The Ecological Research & Development Group
2017年

眼遊記

531 Tung Chung Bay ~香港の素晴らしい干潟とそこに生息する生き物たち その2~
526 Tung Chung Bay ~香港の素晴らしい干潟とそこに生息する生き物たち その1~
511 下白泥 ~香港の干潟~

 

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